佐藤宏のニューヨーク便り
1998.11.12

 ニューヨークにクリスマスシーズンの訪れを告げるロックフェラーセンターのジャンボクリスマスツリーがオハイオ州から到着しました。
 毎年12月になるとアメリカ、そして世界中から約1400万人もの人がツリーを見にやってきます。このイベントの始まりは大恐慌時代の1931年。街中に溢れていた失業者を励ますためにツリーが飾られました。66本目となった今回の木は、高さ23メートル、重さ7トン。1年をかけて見つけだした見事な三角形のエゾマツです。
 ロックフェラーセンターには「ツリースカウト」という聞き慣れない仕事があります。たっぷり1年をかけてクリスマスツリー用の最高の木を見つける仕事です。
 ツリースカウトは今年の木をオハイオ州クリーブランドで発見しました。育ての主は80歳になるジター夫妻です。60年前クリスマス用に買い、そのまま庭に植えた木は今や家のシンボルです。長女のマリアンさんは「木はいつも私の人生と共にあったから不可欠な存在。枝でよくかくれんぼをしたわ」と思い出を語ります。結婚、子供の誕生、成長…とジター一家の歴史は木の歴史と重なります。ジターさん一家にとって大切な木ですが、ジター夫妻はロックフェラーセンターの申し出に、「みんなが楽しんでくれるなら」と木を寄付する事を快諾しました。
 


そしていよいよ伐採の日。60年かけて育った大木がわずか1分ほどで切り離されました。ジター夫妻も感慨深げでした。




700キロ離れたニューヨークまでは世界最大の貨物航空機で運ばれました。ツリーが飛行機で運ばれるのは70年近い歴史の中で今回が初めてです。


 ジャンボツリーは高層ビルが建ち並ぶマンハッタンに来ても大きく見えます。ツリーは3時間をかけてスケートリンクを見下ろす所定の場所に備え付けられました。
 明日以降、ツリーには長さ8000メートものコードが巻き付けられ、2万6000個の電球がつけられて12月2日の点灯式を待ちます。60年間ジターさんの一家を見守ってきた木は、世界で最も注目されるクリスマスツリーとなって、1ヶ月間、人々の目を楽しませます。